進捗の法則:小さな前進が大きなやる気を生む理由
仕事で、そして人生で、やる気を保つためにいちばん大切なものは何でしょうか。認められることでしょうか。お金でしょうか。情熱でしょうか。
ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビールとスティーブン・クレイマーの研究によれば、そのどれでもありません。7社で働く238人の専門職が書いた11,637件の日誌を分析した結果、はっきりした答えが見つかりました。
意味のある仕事で前進すること。
大きな飛躍でも、昇進やボーナスでもありません。自分にとって大事なことが、少しずつでも前に進んでいるという感覚です。二人はこれを**進捗の法則(The Progress Principle)**と呼びました。やる気についての研究の中でも、特に重要な発見の一つです。
研究の内容
アマビールとクレイマーは参加者に、毎日の仕事の終わりに、その日の感情、やる気、物事の受け止め方を評価し、印象に残った出来事を書いてもらいました。研究者はそれらの記述を分類し、パターンを探しました。
結果は目を引くものでした。
- もっとも調子の良かった日(やる気と前向きな感情がもっとも高かった日)の76% で、意味のある仕事での前進がありました
- もっとも調子の悪かった日には逆のことが起きていました。いちばん多く報告された出来事は、前進ではなく後退でした
- 後退(前進の反対)は、前進の2〜3倍の感情的な影響を持っていました。つまり、悪い1日の打撃は、良い1日のうれしさより大きいのです
- 認められること、報酬、人からの支えのどれも、前進ほど強くやる気を予測しませんでした
いちばん意外だったのは何でしょうか。社員のやる気を高めるものは何かと尋ねられたとき、マネジャーたちは「前進すること」を最下位にしていたのです。やる気を支える立場にある人たちが、何がやる気を生むのかをいちばん分かっていませんでした。
出典:Teresa Amabile and Steven Kramer, "The Power of Small Wins", Harvard Business Review, 2011年5月。および二人の著書 The Progress Principle(Harvard Business Review Press, 2011年)。
前進がこれほどやる気を生む理由
自己効力感の理論
自己効力感とは、自分は物事をやり遂げられるという信念のことです。アルバート・バンデューラの研究は、自己効力感のもっとも強い源が達成体験、つまり課題をうまくやり遂げた経験であることを示しています。小さな成功の一つひとつが、自分にはできるという証拠になり、それがもっと大きな挑戦に取り組む自信を育てます。
前進 → 自分にはできるという証拠 → 自己効力感 → やる気 → さらなる前進。
内面のワークライフ
アマビールは、毎日の経験の表面の下で起きている、受け止め方、感情、やる気の相互作用を表すために、「内面のワークライフ(inner work life)」という言葉をつくりました。前進は、この3つすべてに良い影響を与えます。
- 受け止め方が良くなる:自分の仕事をより意味のあるものとして、困難をより手に負えるものとして見られるようになります
- 感情が良くなる:満足感、誇り、打ち込む気持ちが高まります
- やる気が高まる:内側から湧く意欲が強まり、続けたくなります
その反対の後退は、3つすべてを同時に損ないます。悪い日が不釣り合いなほどつらく感じられるのは、このためです。
進捗の法則を自分の生活に生かす
1. 前進を目に見えるようにする
この法則は、自分の前進に気づいたときにだけ働きます。そして毎日の前進のほとんどは、意識して記録しないと気づけないほど小さなものです。
これが、今日できたことを記録するいちばんの理由です。どんなに小さくても、やり遂げたことを記録すると、進捗の法則が働きはじめます。記録するという行為が、明日のやる気を生む「気づく瞬間」をつくるのです。
Auraのようなツールは、この考え方をもとに設計されています。前進を目に見えるようにして、やる気の循環を止めないことです。
2. 仕事を意味のある単位に分ける
「本を書く」では、毎日の前進のしるしが得られません。「今日500語書く」なら、はっきりとした、達成できる前進の目印になります。この法則には動きが見えることが必要です。つまり、目標を1日単位の行動に分解しておく必要があります。
目安: 1日の終わりに前進したかどうか分からないなら、測る単位が大きすぎます。
3. 後退から身を守る
後退の打撃は前進のうれしさより大きいので(二人のデータでは、幸福感への影響が2倍以上)、後退への対処は、できたことを生み出すのと同じくらい大切です。
- 後退をデータとして捉え直す。 うまくいかなかったという事実は、何がうまくいくかを理解するための前進です。
- 計画に余裕を持たせる。 非現実的な期待は、小さな後退を絶えず生み出します。
- 後退を積み重ねない。 何かがうまくいかなかったら、次の作業に移る前にひと息つきましょう。後退を受け止めておくと、気持ちが次へ持ち越されるのを防げます。
4. 意味のある仕事を選ぶ
この法則は、意味のある仕事と明確に述べています。ただ忙しいだけの作業での前進は、同じやる気を生みません。これは大事なことか、自分を大切なものへ近づけているか、と定期的に自分に聞いてみてください。
毎日のほとんどを意味がないと感じる作業に費やしているなら、やる気が出ない理由は進捗の法則で説明がつきます。そして解決策は、仕事術を増やすことではありません。毎日の活動を、自分の大切にしていることに合わせ直すことです。
5. 「触媒」と「栄養」の仕組みをつくる
アマビールは、前進を支える2つの種類を挙げています。
触媒: 仕事の前進を直接助けるもの。はっきりした目標、自分で決められる裁量、十分な資源、十分な時間、ほかの人からの手助けです。
栄養: 仕事をする人を支えるもの。敬意、励まし、気持ちの支え、仲間とのつながりです。
自分の生活では、次のようになります。
- 触媒 = はっきりした目標、整った環境、合った道具、守られた時間
- 栄養 = 支えてくれる人間関係、自分へのやさしさ、コミュニティ、お祝い
チームと家族のための進捗の法則
人を率いる立場、子どもを育てる立場、あるいは何らかの形でリーダーを務める立場にあるなら、進捗の法則は物事の進め方を変えるはずです。
- 小さな成功を人前で祝う。 大きな達成だけでなく、少しずつの前進を認めます。
- 障害を取り除く。 マネジャーにできるもっとも効果のあることは、やる気を出させるスピーチではありません。毎日の前進をさまたげる障害を取り除くことです。
- 「今日は何をした?」ではなく「今日は何をやり遂げた?」と聞く。 後者の質問は成果を前進として、前者は作業として捉えさせます。
家族なら、子どもが自分にとって大事なことで前進したときに気づいてあげましょう。難しい算数の問題を解いた、ゲームが上達した、けんかをうまくおさめた。それを認めることが、同じやる気の循環を育てます。
よくある質問
進捗の法則は仕事だけでなく、個人の目標にも当てはまりますか?
どんな場面にも当てはまります。アマビールの研究は職場で行われましたが、その根にある心理(自己効力感、内面のワークライフ、前進が感情に与える影響)は、意味のある何かに向かって取り組んでいるどんな分野にも当てはまります。
何が「前進」に数えられますか?
あなたを前に進めるものなら何でもです。新しいことを学ぶ、作業を終える、障害を乗り越える、やり方を磨く。何がうまくいかないかが分かったことも、進む道を絞り込むなら前進に数えられます。
何もうまくいかない日には、どう生かせばいいですか?
後退の日には、立ち直る力そのものが前進です。ひどい1日だったけれど、まだここにいて、まだ続けるつもりでいる。それも一つの前進です。できたこととして記録しましょう。
次に読みたい記事
- 達成したことを記録することが本当に大切な理由:前進を目に見えるようにする仕組み。
- 毎日1%の成長:小さな改善の背後にある計算:進捗の法則の背後にある積み重ねの計算。
- 今日できたことの完全ガイド:今日できたことについての総合ページ。