成長マインドセット:本当に効く実践エクササイズ
キャロル・ドゥエックの成長マインドセットの研究は、ポスターの標語にまで縮められてしまいました。「できると信じれば、半分は達成したも同然」。研究が言っているのはそういうことではありません。そしてこの誤解こそが、多くの人が「成長マインドセット」を身につけようとして、何も変わらないと感じる理由です。
本当の成長マインドセットは、自分は何でもできると信じることではありません。自分の能力は努力と戦略と失敗から学ぶことによって伸ばせると信じ、その信念にもとづいて、具体的で測れる形で行動することです。
ドゥエックが実際に見いだしたこと
ドゥエックの研究(多くの査読つき論文で示され、2006年の著書Mindsetで広く知られるようになりました)は、2つの考え方の傾向を描いています。
**固定マインドセット:**知能や能力は変わらない性質だという考え方。頭が良いか悪いか、才能があるかないか、どちらかです。努力は力不足のしるしで、本当に力があるなら難しくはないはずだ、と考えます。
**成長マインドセット:**知能や能力は、練習と戦略と努力によって伸ばせるという考え方。苦労は、できないことのしるしではなく、学んでいることのしるしです。
主張はこうです。成長マインドセットを持つ人は、時間とともに成果を伸ばします。才能が上だからではなく、課題やフィードバックや失敗への反応が違うからです。中学1年生373人を対象にしたよく知られた研究では、知能は伸ばせると信じていた生徒は、中学の2年間で数学の成績が上がり、ほかの生徒は横ばいのままでした(Blackwell、Trzesniewski、Dweck、2007年)。その後の、はるかに大規模な研究では、この初期の研究が示したより関係は弱いことが分かりました。数字は下のよくある質問にあります。
**失敗への固定マインドセットの反応:**自分は力不足だと考える → その課題を避ける → 伸び悩む 失敗への成長マインドセットの反応:「まだ」分かっていないだけだと考える → 戦略を調整する → 伸びる
見落とされがちな細かな点
ドゥエック自身も、単純化しすぎた解釈には反論しています。
- 成長マインドセットは、努力だけで十分だという意味ではありません。戦略と助けを求めることは、努力と同じくらい大事です。
- 誰もが両方のマインドセットを持っています。運動については成長マインドセットでも、数学については固定マインドセットかもしれません。
- 「あなたならできる」と言うだけでは、成長マインドセットは生まれません。生まれるのは一時的な良い気分で、根にある信念は変わりません。
成長マインドセットを育てる8つの実践エクササイズ
1.「まだ」の練習
「これはできない」と考えている自分に気づいたら、「まだ」を足します。
- 5kmを走れない → 5kmを「まだ」走れない
- これが分からない → これが「まだ」分からない
- 人前で話すのが苦手 → 人前で話すのが「まだ」苦手
言葉を少し変えるだけで、できないことが一時的なものとして捉え直されます。変わらない自分のあり方ではなく、今の状態です。
**練習:**1週間、1日3回スマートフォンのリマインダーを設定します。そのたびに、その日の「できない」という言葉を1つ見つけて、「まだ」を足します。
2. 努力の過程を日記に書く
難しい作業をやり終えたら、3つの文を書きます。
- どんな戦略を使ったか
- 何が難しく、その難しさにどう対処したか
- 次は何を変えるか
これで、結果を裁くのではなく過程を分析する習慣がつきます。時間がたつと、原因の捉え方が、自分がこういう人間だから成功した・失敗したというものから、自分がこうしたから成功した・失敗したというものへと組み替わっていきます。
3. 苦労の物語を書き直す
今うまくいかずに苦労している分野を1つ選び、2つの段落を書きます。
**1段落目(固定):**固定マインドセットで物語を書きます。「うまくいかないのは、自分がもともとこれに向いていないからで……」
**2段落目(成長):**同じ状況を成長マインドセットで書き直します。「うまくいかないのは、今が学んでいる段階だからだ。今分かってきているのは……」
2つを並べて読むと、違いが実感として分かります。たいていの人は、成長の版のほうが、より正確で、より役に立つと感じます。
4. 自分からフィードバックを求める
成長マインドセットの人はフィードバックを求め、大切にします。固定マインドセットの人はそれを避けます(フィードバックが力不足を裏づけるかもしれないからです)。
**練習:**週に一度、伸ばそうとしていることについて、誰かに具体的なフィードバックを頼みます。「どうだった?」ではなく、「[X]でもっと良くできる具体的なことを1つ挙げるとしたら何?」と聞きます。
聞くときの居心地の悪さは、成長の領域にいる証拠です。得られる情報は、上達を速めます。
5. 熟達した人の伝記を読む
尊敬する人たちが実際にどうやって技を身につけたのかを読みます。ほぼ例外なく、何年もの練習、何度もの失敗、戦略的な工夫、伸び悩みの時期を越えて続けたことが見つかります。
マイケル・ジョーダンは高校2年のとき、学校の代表チームから外されました。J.K.ローリングは12の出版社に断られました。これはやる気を出すための決まり文句ではありません。熟達が実際にどう育つのかを示すデータです。
6. 達成だけでなく、学びも記録する
毎日の記録(日記でも、Auraのようなアプリでのチェックにつけるメモでも)に、「やり遂げたこと」と並べて「学んだこと」の欄を入れます。これで脳は、結果だけでなく、成長の過程に価値を置くようになります。
1か月たつと、学びの記録は、自分が絶えず成長しているという証拠になります。成長マインドセットの中心にある信念が、形になるのです。
7. わざと苦手なことをする
週に一度、わざと苦手なことをします。「絵が描けない」なら絵の教室に行く。新しいスポーツを試す。楽器を習う。作ったことのない国の料理を作る。
目的は、それが上手になることではありません。初心者であるという経験、つまり苦労し、失敗し、上達する経験を練習することです。これで、学ぶ過程そのものに慣れていきます。
8. ほめる言葉を変える
子どもがいる人、選手を指導する人、部下を持つ人は、能力をほめるのをやめて、過程をほめるようにします。
- 「頭がいいね」ではなく →「その作戦、よく頑張って考えたね」
- 「生まれつきの才能だね」ではなく →「練習がちゃんと実を結んでいるね」
- 「よくできたね」ではなく →「うまくいくやり方を見つけるまでに、3つの方法を試していたね」
小学5年生を対象にした6つの研究では、知能をほめられた子どもは、学べる課題よりも、頭が良く見える課題を選ぶことが多くなりました。失敗したあとは、努力をほめられた子どもより粘りが少なく、課題を楽しめず、成績も下がりました(MuellerとDweck、1998年)。
成長マインドセットのよくある失敗
戦略抜きで努力をほめる。 うまくいかないやり方で懸命に頑張るのは成長ではなく、ただの頑固さです。成長マインドセットが大切にするのは「適応する」努力です。試し、評価し、調整し、また試すことです。
成長マインドセットを使って気持ちを片づける。 本当に苦しんでいる人に「成長マインドセットを持てばいいよ」と言うのは、相手の気持ちを軽んじています。まず難しさを認め、それから成長へと向きを変えてください。
全部かゼロかで考える。 いつも完璧な成長マインドセットでいる必要はありません。目指すのは、固定マインドセットの考えを一度も持たないことではなく、そうした瞬間の自分に気づき、意識して切り替えることです。
よくある質問
成長マインドセットは科学的に正しいのですか? 否定されたと聞きました。
否定されたわけではありませんが、一般に広まっている話よりは小さなものです。Siskらによる2つのメタ分析(2018年)は、マインドセットと成績に関する273件の研究と、学校でのマインドセット・プログラムに関する43件の研究をまとめました。どちらも、全体としての効果は弱いという結果でした。プログラムが最も役立ったように見えたのは、貧しい家庭の生徒や、すでに勉強で苦労している生徒でした。脳は学ぶことで実際に変わりますが、それだけでは、そう信じることが結果を上げることの証明にはなりません。成長マインドセットは、特効薬ではなく、役に立つ考え方の習慣の1つとして扱ってください。
何歳からでも成長マインドセットは身につけられますか?
はい。脳の可塑性は一生続きます。大人は固定マインドセットの思い込みが根深いかもしれませんが、そのぶん、意識して自分で変わる力もあります。上のエクササイズはどの年齢でも使えます。
成長マインドセットが自然になるまで、どれくらいかかりますか?
これについての確かなデータはありません。私たちの経験では、着実に練習を続けると、数週間のうちに心の中のひとりごとの変化に気づく人が多く、もっと深い思い込みには何か月もかかります。成長マインドセットそのものも、成長マインドセットのやり方で育つものです。過程を信じてください。
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